一つ,契約前に腕前を見極める秘策をお教えしよう。 かつらを装着した客の、カットしてもらった直後を見るのである。 そんなの見せてもらえないって? なあに,簡単な手がある。 まず,雑居ビルに入っている場合は,かつらサロンが何階にあるかを覚えておく。 そして,1階のエレベーターの前で人待ちを装って,エレベータの階表示を見ているのだ。 下行きエレベーターがサロンのある階で止まれば,その店の顧客が乗っている可能性が高い。 同じフロアに他の店舗が入っている場合でも,どんなそれがどんな 店かわかれば,どちらの客かはすぐわかる。 例えば,事務所なら土日の出入りは少ないだろう。 こうして,エレベーターから出てくる,かつら装着客のカットの出来不出来を観察するのだ。 もう一つの方法は,かつらショップの駐車場である。 店の専用駐車場があるなら,そこに出入りする人を見ていればいい。 自社ビルならもっと話は早い。車を前に止めて,ひたすら見ていればいい。 まるで探偵にでもなった気分だが,何十万円もの契約をするのだから,休日の数時間くらいはこうした作業に費やすべきだ。 余談だが,一方,あなたが客の立場だったらどうするか。 雑居ビル内のサロンで一番イヤなのが,エレベーターに他の客と乗り合わせた時である。 例えば,1階で何人かの人がエレベーターを待っているとしよう。 エレベータに乗り込んで,行き先ボタンを押した瞬間,他の乗員へ「私はこれから,かつらサロンに行きます」と宣言しているようなものなのだ。 そんなときはどうするか。1階手前で降りるのである。 で,1階だけ階段で上ればよい。 この方法は,カットが終わって帰るときにも使える。 下行きのボタンを押して,やってきたエレベータに先客が乗っていたら,ものすごく気まずい。 「あなたはそのフロアで何をしていたのですか? そこにはかつらサロンがありますねぇ」 相手の視線が突き刺さる。 そうならないためには,歩いて1階降りるのだ。 そして,エレベーターに乗ればいい。 |